花とアイドル☆《完》

さっき逃げるように家を出て
行ったときの、花乃のぎこちない
表情がよぎった。


――花乃さん……!

やっぱ本が欲しいとか嘘だ。

オレと顔合わせづらくて、出てっ
たんだ。


「くそっ。この話はまた今度だ」


吐き捨てるように奏にそう伝える
と、ベッドの上に放置したまま
だったジャケットと財布を乱暴に
掴む。


『おい――』


電話口の奏が何か言おうとして
いるのが、最後に聞こえた。

だが、無視して通話を切ると、
携帯もポケットに押し込み、拓斗
は部屋を出た。


階段を駆け降り玄関に向かう途中
で、リビングから奈津美さんと、
いつの間にか帰宅したらしい愛香
が出てきて、声をかけられる。