花とアイドル☆《完》

「すいません。

私はキッチンにいましたので、
どんな話をされてたかまでは、
ちょっと……」


申し訳なさそうに謝る奈津美さん
に、拓斗は口調を荒らげ過ぎた
ことに気づいた。


あわてて『こちらこそゴメン』と
謝りながら、頭の中では目まぐる
しく思考を巡らせる……。


――おかしい……。

そんなの、朱鷺田さんらしくない
……。


たしかに、拓斗は奏に対し、弱音
を吐いたりすることを嫌う。

なので、疲れが溜まっていたり
体調が悪くても、何事もないよう
に強がることは、今までにもよく
あった。


今も、疲れていないといえば、
嘘になる。


でも――。


奏は、いつも拓斗の一枚も二枚も
上をいっていて。