花とアイドル☆《完》

少しして、奈津美さんがふと思い
出したように呟いた。


「そういえば――。

花乃さん、昨日の夜から、少し
元気がないような気もしますね」


「そうなの?」


コーヒーカップを口に運ぶ手を
止めて、拓斗も聞き返す。


「ええ、なんとなくですけれど。

私がお見かけしたのは、帰宅され
て朱鷺田さんとお話なさっていた
時と、お夕食の時だけですが」


――え?


拓斗はカップをソーサーに戻して
、まじまじと奈津美さんを見た。


「朱鷺田さん、
昨日ここに来たの?」


「え? ええ……ご存じなかった
んですか?」


「……知らねー」


イヤな予感が、拓斗の胸にモヤ
モヤと広がってきていた。