花とアイドル☆《完》

窓越しに会話したときの、花乃の
表情を思い出す。


最初は、何のことか分からない、
というような顔をしていたけど。


思い当たるやいなや、パッと弾け
るような笑顔になって。

少し頬まで紅潮させて、喜んで
いた。


――きっと、あんなふうに喜んで
くれると思ったから。

その顔が見たくて――オレ……。



「……もういい。

オレ、少し寝るから。

スタジオ着いたら起こして」


これ以上会話を続けたくなくて。

拓斗は一方的にそう言うと、
キャップを目元が隠れるまで目深
に被って、目を閉じた。


運転席の奏が、何か言おうと息を
ついた気配がする。