花とアイドル☆《完》

「――心配しすぎだろ。

あんな場所、住人以外誰も通ん
ないじゃん」


不機嫌をあらわにした声で、拓斗
はボソボソと吐き捨てるように
言う。


だが、奏も簡単に引き下がりは
しない。


「断言はできないだろう。

注意し過ぎるにこしたことはない
、と言ってるんだ」


「あーもーうるせーなっ。

分かったよ! 今度から気を
つけりゃいいんだろっ」


とうとう我慢できなくなって、
拓斗は怒鳴った。


「どうした?

何を怒っている?」


対する奏の口調は、落ち着いて
いて平坦そのもの。


どんな時でも、奏のこのクールな
口調が崩れることはない。

自分だけが熱くなってる――。

そんな感じが、よけい拓斗を
不機嫌にした。