花とアイドル☆《完》

赤くなってるに違いない顔を隠す
ために、花乃が黙って俯いていると。


拓斗は、独り言のように言葉を
続けた。


「花乃さんみたいなコが、母さん
には合ってるのかもな。

下宿人が来るのは初めてじゃない
けど、母さんがこんなにはしゃい
でるのは、初めてだ」


「え――前にも、下宿してた人が
いたんだ?」


「何人かね。

父さんの会社の新入りで、地方
から出てきたコとか」


「へぇ……」


「でもまぁそういうコ達だから。

どっちかってーと、夢叶えるため
にガツガツって感じでさ。

花乃さんみたいに、母さんと
普通に一日過ごしてくれること
なんてなかったんじゃないかな。

だから母さんも、楽しくて仕方
ないんだと思う」