どうして…。

確かに、蒼はあまり恐怖心を感じない人だとは思ってた。

でも、あそこまでされたら…。

普通、怖いだろ!

私の普通の感覚が狂って来てるの?

私は、あの日の事を何も言いだせず、悶々と一人で考えていた。



昼休み

私と茜は、蒼たちに誘われて体育館に来ていた。


「若いな~」

「いやいや、同い年ですから…」


毎日のように、お弁当を食べたら、クラスの男子達の半分はいなくなる。

どこに行ってるのかと思ったら、食後の運動だったのね…。

私と茜はステージの上に座って、みんなが走り回るのを見ていた。


「美月ちゃん、変わって~!」

「無理無理、男子の中でバスケなんて出来ないって」

「じゃ、私入ろうっと!」


茜は、シャツの袖をまくりあげて気合十分。

肩で息をする坂下くんと、タッチをして茜はコートに入って行った。

ホント、茜は運動神経いいんだな…。


「美月ちゃんって部活とかやらないの?」

「う~ん、今は勉強の方が大事かも…」


『そっか?』と首をかしげなたら坂下くんはコートに視線を戻す。


「蒼も、運動全般得意だよね~」


蒼は、あれから記憶が戻った様子もなく、私が言った事を信じてくれたようだった。

私はと言うと…何故だかわからない…。

こうやって遠巻きに見ていると…蒼の姿を追ってしまう。

近くにいるときは、何も感じないようにしているのに…。


「だね。バスケは中学の時やってたみたいだよ?頭もいいし、運動もできるんじゃかなわないよ…」


あれが、もし…坂下くんだったとしたら?

私はどうしていた?

だいぶ前の話だけど…坂下くんが私の肩に寄りかかってきた事があったっけ。

それだけで、怖くてたまらなかったのに…。

それから時間が経ったから?

こうやって、坂下くんとも話ができているのは事実だけど…。

坂下くんにあんなことをされたら、こんなふうに普通に話したりできてるのかな。


「あはは!坂下くんも上手だったよ?」

「ホント?」


坂下くんは、満面の笑みで私を見ていた。