「美月の家から駅まで30分くらいか?」

「あ、うん。そんなもんかな?」


帰り道。

いつものように、蒼と一緒に私のマンションまで向かって歩いていた。

初日は、お母さんの自転車を借りてきてくれていた蒼だけど、最近はずっと歩きだった。

校門で、二人乗りをしているのを発見され、担任にこっぴどく叱られたから…。


「じゃぁ、迎えに行くから待ってろよ!」

「え…一人で大丈夫だよ!」


出かける度に一緒って訳にもいかないし。

最近、茜と蒼への依存率が上がってる気がする。

二人がいないと何もできなくなってしまうような気がして怖い。

…まぁ、気の持ちようなんだろうけど…


「なんで?俺、なんかした?」

「え?そんな、まさかぁ!」


私が頼りすぎてて申し訳ないだけ。

蒼も時々、ネガティブになるよね…。


「何もない?」

「ないよ!」


蒼は私をジッと見て、少し考えている。

一瞬、おでこにされたキスの事を思い出し、顔が赤くなる。

マズイ…

そう思った瞬間、蒼の視線は私から逸らされた。

ほっ…。


「じゃぁ、迎えに行く!余計なことは考えないように!」


…私がわかりやすいだけなのか…

それとも、茜や蒼が、人の気持ちを察する能力が高いのか…。

いずれにしても、私が考えていることはバレバレのようだった。

結局、家まで迎えに来てくれた蒼。


「なんか、いつもゴメンね?」

「俺が好きでやってんだから気にすんなって言ってんだろ!」

「イッタっ!」


蒼にデコピンを食らわされ、オデコをさする私を、私を見下ろす蒼のクスクスと笑う笑顔を見ていると、心がほわっと温かくなって許せてしまう。

ホントに不思議な人だなぁ…。