「え?」
人魚はまだ、目を覚ましてはいなかった。
でも、・・・でも、彼女の、ずっとおろされていた手が、ガラスケースをへだてて僕の手と重なっていた。
人魚は何も言わない。
しかし確かに手は僕の手に重なっていて、それは実験でも反応しなかった彼女が僕に反応したんだってことを意味した。
僕は少し震えると、人魚に微笑んだ。
「母さん、お願いがあるんだ」
「・・・」
「彼女に、キス、させてくれないかな?」
母相手に変なことを言っているのはわかっていたけど、彼女が早く微笑む姿を、僕は見たかった。
「いいわ、あなたにかけてみましょう」
「うん、ありがと」
いつの間にか寝てしまっていた弟を抱いて、母は館長のところへとかけていった。
