微笑まれたその瞬間に、私の心臓がドキッと鳴った。

ああ、やっぱりこうだな。

私の相手は、年上だ。

「着物、お似合いですよ」

サラリと、さりげなく彼が褒めてくれた。

私の今日の格好は、親戚のお姉ちゃんから借りた薄桃色の着物だ。

私に似合うかどうか少し不安だったけど、
「ありがとうございます」

嬉しい気持ちでいっぱいだった。

それに自然にさりげなく褒めるところは、年上のいいところだよね。

不自然じゃないし、お世辞とか嫌みじゃないから。

「冴子さんは、何かご趣味がありますか?」

岸田さんが聞いてきたので、
「趣味、ですか?

そうですね、ピアノと料理が好きです」

私は答えた。