「気まぐれだな……」 どこまで気まぐれか。 先ほどまで私に近づこうともしなかったのに。 今は行くなと言ってくる。 「お前の気まぐれに左右されるほど、私は簡単な人間じゃないんだ」 猫は意味もわからず、それでも自分に向かって話しかけられているのは理解しているようで、 キョトンとした瞳を私に真っ直ぐ向けてくる。 その瞳を背に、私は玄関から出た。