隣で夏実は静かに寝息をたてている。俺はそろそろ火の番の交代をしようと、今火の番をしている狼に声をかけた。

「交代しよう」

すると狼は俺を睨み、立ち上がった。どうやらこいつは俺のことが嫌いらしい。まあ嫌われていても別に問題はない。俺は燃え続ける炎に視線を移した。
すると

「おい」

狼が声をかけてきた。おそらくはじめてだ。なんだ、と狼を見上げる。

「夏実は私が守る」

「……は?」

突然のことに、思わずぽかんとした。

「夏実のかわりに私が戦う。血に濡れるのは、私だけでいい」

狼はそういうとタオルをかばんから引っ張り出し、そのタオルをかぶって寝た。
なんなんだこいつ……。
俺はため息をつきたいのをこらえ、弱まりつつある炎に木を焼べる。