「なんでもないです」

震えた声でそういい、夏は立ち上がった。返り血を拭うその腕も震えていて、私は今更思い出した。

「実戦は初めてか?」

私よりも先にアイツが声をかけると、ビクっと夏実が反応した。
私も立ち上がると、夏実は俯いて小さな声で謝ってきた。

「いや……悪い、私ももっと気をまわせば……」

私が言うと、夏実は首を横に振った。それを見たアイツは

「とりあえず、今日はもうこれ以上は進めない。野営しよう」

と提案した。私が同意すると、さっさと準備をはじめる。ただ夏実は少しのあいだ、俯いたままだった。