「アテ南区からきた、水樹夏実……か?」

突然背後から声をかけられた。
振り向くと、私より少し背の高い男がいる。
無造作な黒髪に所々メッシュがはいっていて、表情は無表情。
華奢のように見えなくもないが……体格が悪いようにも見えない。
だからか少し怖い印象がある。
腰には鞘と剣の柄が見えた……から、剣士だろう。
服は全身黒で統一されていて、ジャケットの中から見えるインナーは灰色っぽい黒だ。
どんだけ黒が好きなのよ、と突っ込みたいのを堪えつつ、私は頷こうとした。
しかし……

ガチッ

「お前、ナニ?」

「ろ、狼!?」

私とその男の間に、狼が割ってはいっていた。
と同時に、狼はセーフティーを解除した拳銃の銃口をその男に向けている。