「ね、これからはさ、教室でも普通に話しかけていい?」


「……え?」


「って言うかいいよね? あ、あたしこれからバイトなの。またねっ」



戸惑うあたしをよそに、彼女はもうすっかりつかえていたものが取れたような顔をして。


ひまわりみたいな笑顔とイイニオイを残して、準備室を出ていった。





「良かったですね」



立ち尽くしているあたしに、くすくすと笑いながらセンセイが言った。



「……良かったって、何がですか?」


「楽しくなりそうじゃないですか、明日から」


「楽しく?」



ええ、と頷いたセンセイは、キャンバスにかかった布をはらりとめくって、



「じゃ、始めますか」



パレットに絵具をのせた。


そろそろ5分咲きになろうとしている桜の絵に向き合いながら。