クラスメイトにさえ、こんなふうに警戒している姿。
そんな自分を見られてしまった恥ずかしさで顔が赤くなるのがわかった。
見てないで助けてよ。
そんなふうにも思ったけど、きっと、センセイはこの状況だって楽しんでるに違いない。
くやしい。
きっ、とセンセイの眼鏡をにらんでから背筋を伸ばしたあたしは、
「お礼とか、なに?」
平静を装って聞くと、
「自転車」
「自転車?」
「うん、あたしが自転車ごと転んじゃった時、佐伯さん、声かけてくれたでしょ?」
「転んだ時?」
「去年の冬。登校中に」
「……ああ、」
「思い出した?」
思い出した。
北風がひと際冷たかった去年の3学期の冬の朝。
登校中の道の上、急に吹いた突風で横を通り過ぎた自転車が倒れたことがある。
びっくりしたあたしはうつむきながらその脇を通り過ぎたんだけど。
地面に放り出されたオンナの子がどうにも気になって。
しぶしぶ戻って声をかけた。
『だい、じょうぶ?』
『痛ったーい!』
顔を上げたのは、そういえば彼女だった。
可愛い子だな……って思ったのを覚えている。

