「雪、みたい」
はらはらこぼれる花びらは、
ホンモノの雪よりも不安定に浮いて、あたしの周りで遊ぶ。
「う、わ……」
強い風が吹いて、一瞬だけ止まった空気の中。
白い花びらが盛大に降りそそぐ。
「待っ、て……」
地面に落ちてしまわないうちに、桜の真下に駆け寄った。
両手を広げて、全身で受け止める溶けない雪。
スノードームの中にいるみたい。
舞い上がった粒を、ひとり占めできる。
あたしだけの、とっておきの時間。
そうなるはずだったのに。
「なにをしてるんですか」
背後からの声に、つかまってしまった。

