こんな所に隠れる必要があるの?
そう聞けないまま、
あたしはしばらくの間、センセイに包まれていた。
けど。
「……センセ、」
「はい?」
もう、限界で。
甘い声と、自分の心臓の音に、耐えきれなくて。
「こんなとこ、誰かに、見られたら……どうするんですか」
あたしばかりドキドキしてるなんて、我慢ならなかった。
だから、困らせてやるつもりだった。
なのにセンセイは、
「大丈夫ですよ。美術室なんて、よほどの用事でもない限り誰も来ませんから」
全然、困ってるふうもなく言う。
「そうじゃ、なくて」
生徒とセンセイの、こんな距離。
オカシイって、思わないの?

