「静かに」



振り向くよりも先に、


あたしを包んでいるのが蓮見センセイだと気づかせたのは、


微かなタバコのにおいと、その低い声。



「……ん、」


「中に、人がいるんですよ」



そう小さく言ったセンセイは、


あたしを抱きかかえたまま美術室の床を猫みたいに歩いて、



「ここで、待機しましょう」



教壇の下のわずかなスペースに身をおいた。