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気持ちいいとか、よくないとか。
そんなこと、分からない。
今言えるのは、
右手が熱いってことだけ。
センセイの瞳の中にいるモノクロのあたしの顔が、
本当は、すごく赤いんだろうってことだけ。
「……やっぱり、ダメ、です。画けない、から」
センセイの手の中に画筆を押し付けて、窓際に戻ろうとしたあたしを。
「ちょっと待ってください」
白衣の腕が引き止めて。
「罰なんですから。ちゃんと手伝ってもらわないと」
あたしの手をもう一度つかまえたセンセイは、
パレットの上のキレイな色を選んで、画筆に足した。

