「やってみますか?」 微笑んだセンセイは、あたしに画筆を差し出して言った。 「え?」 「佐伯さんも、描いてみますか?」 「いいです、無理です」 「無理だと決めつけてるのは自分なんです」 「……難しいし」 「やってみれば案外簡単なんですよ」 渡された画筆を思わず握ってしまったけれど。 大事な作品になるはずの絵に、手なんて出せるわけがない。