「……いいな」 思わず声にしてしまうと、 「はい?」 センセイの手が止まった。 「どうしました?」 「いや、その……」 「ん?」 「……羨ましいなって」 「羨ましい?」 あたしは小さく頷いた。 「上手に描けていいなって」 本当は、上手に色づけられていく桜が羨ましかった。 彩るものがなくなっても、こうしてまたキレイにしてもらえるから。