この学校の美術準備室はヘンな造りで。
いったん美術室に入って、中を通ってからじゃないと入れない。
ドアにはガラス窓もないから、中の様子を外から確認することもできなくて。
あたしは、慎重に、ゆっくりとドアを開いた。
わずかに残った西日を浴びて、
センセイのカラダを包んでいない、からっぽの白衣が窓際にぶら下がっている。
「佐伯、です」
一応声をかけてみたけれど、返事はなかった。
グレーの机の上に、ベージュのカップが乗っている。
半分まで入ったコーヒーは、冷めているみたいで。
灰皿はないけれど、少しだけ、タバコのにおいがした。

