「手伝うなんて、ムリです」
「どうしてです?」
そんなの、センセイが1番よく分かってるでしょ。
白い花も、灰色に塗りつぶしちゃうようなあたしなんだから。
学校なんて、真っ黒なんだから。
「絵なんて……描けないし」
「手伝うことなんて、他にたくさんありますから」
「……え?」
「案外大変なんですよ。絵具を代えたりパレットを拭いたり。他にもその辺を汚してしまったり」
確かに、棚の上も下も汚れてるけど。
「掃除、ってことですか」
「助手、と言っておきましょうか」
あたしが言葉に詰まっていると、
「侵入好きなオンナの子のせいで、彫刻はもうこんなですから」
白衣の下のネクタイを片手でゆるめながら、絶妙な角度で首をかしげたセンセイは。
「イヤとは、言えませんよね?」
拘束している手を離す代わりに、
あたしの放課後を、手に入れた。