*** * 「窓から侵入したんですか?」 あたしの血をぬぐい取ったくちびるが動いて。 「感心しませんね」 机の引き出しから消毒液を取り出したセンセイは、 壊れた彫刻にちらっと視線を送ってから、あたしの前にヒザをついた。 「何か用だったんですか、ここに」 「あ、」 はっとしたあたしは、床の上のメモ用紙を取り上げてジャケットのポケットに押し込んだ。 センセイには、それを気にかける様子がない。 代わりにあたしの手を持ち上げて、冷たい液体を垂らした。