迷ってるヒマはなかった。
ここの窓が開いてるってことは、
きっとセンセイも、早いうちに戻ってくる。
周りを見渡して、誰もいないことを確認してから窓枠に手をかけた。
運動神経だって、いいほうだから。
学校の塀を乗り越えたあたしに、このくらいの高さなんて何でもない。
両手でカラダを支えたあたしは、
備え付けらしい棚の上に片足をのせた。
棚の上には、ナイフとかポリ容器とか絵具とか、いっぱい乗っていて。
それを踏まないように、音も立てないように、慎重に。
そこまでは良かったのだけれど。
空中に浮いたあたしの足に、何かがぶつかって。
着地するのと同時に、大きな音が鳴り響いた。

