夜なら、誰にもみつからない。
やっと、自分だけの桜を楽しめる。
そう思っていたのに。
見られてたなんて。
あたしのささやかな楽しみは、白い悪魔に奪われた。
数日経って。
学校の門を普通にくぐった時にはもう、桜の花びらはすっかり落ちてしまっていて。
これといった問題もなく2年生になったあたしの、なんの変化もない毎日が再び始まった。
日中の蓮見センセイは、猫みたいに目を細めて。
何事もなかったように声をかけてきて。
ヘタな絵を上手だなんてほめてみたりして。
「絶対、ウソつきだ」
あたしには分かるんだから。
自分もウソつきだから。

