そう思ったのは、


ふわっとほころぶ、笑顔を見たから。


桜の下の顔とは、全然違ったから。




「悪いことも、したかもしれませんね」




たぶん。記憶にないけど。


そんな感じの笑顔を残して。


白衣の裾を揺らしながら、中庭をふわふわと戻っていくサンダルの足。



なに? これ。


なんなの、これ。



残されたあたしは、ただぼう然と見送るだけ。



チャイムが鳴って、


くちびるを結びながら無言で差し出した絵は、いつにも増してヘタクソで。



それを受け取ったセンセイは、


ほんの少し、くすりと笑った。