「展覧会っていつだったの?」


「……」


「センセイ? 聞いてる?」


「聞いてますよ」



薄々感じ始めたんだろう。


無理もない。毎日この部屋に来ているのだから。


彼女の言うとおり、この絵はあれから2週間、この場所を動いていない。



「で、いつだったの?」


「さあ、いつだったか」


「センセイ? はっきり言ったら?」


「ん?」


「その話も、ウソだったんでしょ?」


「何がです?」


「また。すぐそうやってとぼける」



唇をとがらせて。


慣れない手つきで白衣の胸をたたく手を取り上げて、仕方なく薄情することにした。



しかしこんな行為ひとつでも、目の前の顔は赤く染まる。


まるで絵筆で色をおいたかのように。



「そんなにたたいたら、痛いでしょう?」


「あ、ごめ、んなさ……」



からかうつもりはないけれど、知らず知らずのうちにそうしてしまうのは。


負けず嫌いのくせに優しくて、


強がりのくせに臆病な、



亜子、君のせいだ。