「学校では色々支障をきたしますから。ひいきだ何だと言われるのも困りますしね。隠しているわけではありませんけど、公にもしたくなかったんです。それは優花も承知のことですから。キミにも誰にも言ってないと思いますけど」
「イトコ……?」
「前の日に母親とケンカしたらしいんですよ。バイトを辞める辞めないの話で。
あの日はそれをあやしていただけです」
口を開けたままのあたしを見下ろして、センセイが困ったようにほほ笑んでいる。
「今日も優花と話してたんです。キミが学校を休んでいることで。
小芝居をさせるつもりでしたが……上手くいったってとこですかね」
「え……?」
「こうして、キミがここに来たから」
「……よく、わかんない」
「手紙を置いていけば来るかなって言うものですから。そうかもしれないって答えました」
「……」
「まあでも……それだけで来るかどうか……。キミは強情なコですからね。
手紙は渡せないかもしれないとも付け足しておいたんです」
「もしかして……」
「うん?」眉根を持ち上げて、センセイがおどけた顔をする。
「学校を辞めさせられるっていうのは……」
「ええ、辞めません」
「……上原さんのこともワナにかけたってこと?」
「そういうことになるんでしょうか」
困ったように笑うセンセイに、開いた口がふさがらなかった。

