「全部……ワナだったんだ。あたしの反応を見るための」
「ええ」
「……ヒドイよ」
「ただ、」
「何?」
「その時々で僕が言った言葉に、ウソはありません」
「え?」
見上げた顔に、センセイは笑顔を落とす。
「ミイラ取りがミイラになる、そんな感じですかね」
「?」
「キミにワナを仕掛けていたつもりが、自分もかかっていた」
「……よく分かんない」
「キミが誤解してるようだから言っておきますけど、」
「?」
「僕は何とも思っていないコの涙を、直接手でぬぐったりしません」
「……ちょく、せつ?」
「もっとも放っておけませんから。ハンカチでぬぐってあげることくらいはしますけどね」
センセイの言葉を聞いてだいぶ経ってから。
「あ、」
上原さんの涙を、ハンカチでぬぐっているセンセイの姿を思い出した。

