「まあ、安定を選んだってことですね」
「安定?」
「ええ。それが間違っていたとは思いませんが、実際こうして学校に赴任してきてみると……待っていたのはつまらない毎日でした」
ちょっと寂しそうな顔をして、センセイは続けた。
「こんな中途半端な気持ちですから。授業も……言い方は悪いかもしれませんが適当だったかもしれません」
あたしは、中庭を猫みたいに歩くセンセイの姿を思い出した。
「そう言えば……センセイ、退屈そうだったね」
「ん?」
「あたし、教室から見てたの。中庭をぼうっと歩くセンセイの姿。
周りには全然興味なさそうに歩いて。時々気まぐれに声をかけてみたりして。
猫みたいだなって思ってた」
「そうですか」
バレてたんですね、そんな顔をしてセンセイは肩をすくめた。

