「ふ……わ……」



センセイの5度目のあくびは、


3階のあたしの席にまで飛火した。



一応自分の仕事だから、みたいな。


そんな感じでときどき気まぐれに立ち止まっては、生徒に何か話しかけている。



でもそれは、きっとろくな言葉じゃない。



「……いき、さん」


「バランスが悪いとか」


「佐伯さん」


「不安定とか」


「佐伯さん?」


「ムカつく」


「佐伯さん、次、読んで」


「あ、はい」



頭にくる。


調子が狂う。



立ち上がってパラパラとページをめくると、


隣の席のコが、教科書の右下の数字を指さして教えてくれた。



一瞬だけそらした窓の外。


あたしのペースを狂わせていることになんて全然気づいちゃいないセンセイは、


青い空を見上げて、猫みたいに目を細めていた。