「こんなこと、」 しなくていい。 そう言いたいのに。 涙をぬぐってくれるその手の温かさはきっと本物で。 逃れることが出来なかった。 それに―― もっともっと傷ついてもいいと思った。 始めから、そのためにここに来たから。 センセイを、忘れるために。 もっと傷ついて、 キライになってしまいたかった。 「センセイ……、」 「はい?」 「あたし、手紙をもらいに来たんじゃないの」 さっき、言えなかった理由。 お願いするのは、さすがに勇気がいる。 だけどそうしないと、センセイをキライになれない。