「キレイな涙ですね」
ふいに伸ばされた大きな手。
「泣いた顔もいいけれど、キミは笑ってる時のほうが可愛いですよ」
その手が、あたしの頬を包んだ。
あの時のように、親指でぬぐわれていく涙。
だけどこの行為は――
あたしのココロに影を差し込む。
「センセイ、は、誰の涙でも、こうやって……ぬぐうの?」
上原さんのも。
あたしのも。
誰の、でも。
「オンナのコが目の前で泣いていたら、そうするのがオトコの役目ですから」
このヒトは、そういう人。
分かってる。
でも。
「そんなの、」
……ズルイよ。
誰にでも優しいなんて、
ヒドイよ。

