「ただの風邪だから。心配なんてしてもらわなくても大丈夫だから」
『……クラスのみんなも心配してるよ?』
また、ウソばっかり。
あたしのことなんて、みんなが心配するはずない。
『横山さんたちのグループいるじゃない? 今日ね、あたし手紙預かったんだ』
「……手紙?」
『うん。佐伯さんに渡してって』
どういうこと?
『佐伯さんがいないと、クラスをまとめてくれる人がいないから大変なんだって。佐伯さんってほら、静かにそこにいるけど、なーんか存在感あるでしょ?』
くすくすっと上原さんが笑う。
っていうか、存在感って。
あたしにそんなものないし。
……空気なんだから。
『やっぱりね、佐伯委員長がいないとダメなんだよ、うちのクラス』
「……そんなこと、」
『あるの!』
「……」
『それにさ、』
言葉を区切った上原さんは、
『センセイがいなくなっちゃったら、もう会えないかもよ?』
小さな声で言った。

