「もうこんな時間だし、送っていきますよ」 うつむいたままのあたしの顔を、センセイがのぞき込んだ。 「佐伯さん?」 「……いい。優しくしないで」 まだ気がすまないの? センセイ。 「……もういいでしょう?」 そらしていた視線を合わせたら、ぽとりと涙が落ちた。 泣き顔を誰かに見られるなんて久しぶりで。 隠すために、抱えていた制服に顔をうずめたけれど。 「……どうしたんです?」 センセイの温かい両手で挟まれた頬は、そっと上向きにさせられた。