「こんなトコロにひとりでいたら、わるい狼に食べられますよ? いつどこで、誰がねらってるか分からないんですから」 まだ動けないあたしにかけられたのは、 おとぎ話みたいな、子どもだまし。 「良い子は寝る時間でしょう?」 タバコの煙が揺れ動いて。 隣を通り過ぎる白衣のすそ。 「こ、んな早く寝る高校生なんて、いるわけ、ない、」 途切れ途切れの言葉を吐き出しながら振り向いたときには、 もう、悪魔も誰もいなかった。