ホントは、すぐにでもここを出たいのに。


いつもいつも、センセイのペース。



「コーヒーは苦手ですか?」



ううん、そうじゃない。


黙ったまま首を横に振り、袖口をもぞもぞといじっていると、



「ああ、ちょっと長いですね」



近づいたセンセイがあたしの片腕を取った。



「寒くないですか?」



もう一度、首を横に振る。


ホントは、ちょっと寒い。


でも。


センセイの触れてる場所から体温がどんどん上がっていくのが分かるから。


こんなときでも。バカみたいに。



くるくると、上手に巻きあげられていく袖口。


両手がキレイに現れると、



「どうぞ」



ぼんやりとしているあたしに、センセイはもう一度コーヒーを差し出した。