屋上であたる風は、5月初めと言ってもまだ少し冷たくて。 バケツに汲んだ水が手を濡らすたび、 そこをなぞる風がカラダをちょっとだけ震わせる。 夕日が傾いて、遠くのビルの間に沈もうとしている。 キレイなはずなのに。 色が無い。 「……さっさと片づけて帰ろう」 デッキブラシをただ黙々と。 ひとりで。 こうやってひとりでいるほうが、何倍もラク。 気づいたら夕闇が迫っていて。 あたしは肩で息をつき、汚れた水の入ったバケツをもって出口へ向かった。