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鎖骨をなぞる指先の感触が、
あたしの中をくすぐりながらめぐる。
……夢じゃ、ないのかもしれない。
「や、め……」
抵抗の言葉をかきけすように。
風に舞い上がった花びらは、目の前のヒトに降りそそいだ。
――キレ、イ
こんなことをされているのに。
浮かんだのは、桜の花を愛でるような、そんな言葉。
「大丈夫ですか? 震えてますよ?」
あたしの気持ちを見透かすようにして、あくまでも冷静にほほ笑むその顔は。
まるで、白衣に身を包んだ……キレイな悪魔。
「早く帰ったほうがいい」
からかわれてると気づいたのは、
首筋をすべって抜かれた手が、タバコに火を点してからだった。

