「あれ? 先に行ったのかな」
教室に戻ると、上原さんの姿がなかった。
あたしが戻ってくるまで待ってるって言ってたけど。
「あ、上原さんならもうとっくに出てったよ」
今じゃ普通に声をかけてくれるクラスの女の子たち。
「バイバイ、佐伯さん」
「バイバイ」
ようやく自然に出せるようになった挨拶を返して、夕方の教室を出た。
廊下に差し込むオレンジ色。
ほんのり薄紫色の空。
「キレイ」
上履きのくすんだブルーでさえ、何だか鮮やかで。
外から聞こえる部活動中の声も、もう、雑音には聞こえない。
やっぱりあたし、
ちょっと変われたのかもしれない。
そんなことを思いながら、準備室へ向かった。

