前は、センセイとふたりきりだったから。
目にするものも、聞くものも、
全部、あたしだけのものだったから。
ただ、ドキドキしていただけだったけど。
今は、ふたりぶん。
センセイの視線も声も、
半分に分けられて、あたしの目と耳に入る。
時々、ふたりを眺めながらぎゅっと雑巾を握りしめてる自分に気づいて。
この気持ちは何なんだろうって、はっとする。
センセイはあたしに罰を与えてるだけで。
そしてあたしはそれを受けているだけで。
特別な関係でもなんでもない。
そうはっきり気付かされたのは、
ある日の出来事だった。

