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上原さんは可愛い。
それは、彼女を初めて見た時からわかっていたことで、
こうして付き合うことになってから、ますますそう思うことが多くなった。
苦手意識はあったけど、
“可愛くても飾らない”
そんな性格が、あたしが彼女に気を許す一因にもなっているんだと思う。
好きかキライかと聞かれたら、好きだと答えられるくらいになってるし。
だけど。
この気持ちは何なんだろう。
「センセイ、そのネクタイいいね」
「そうですか? ありがとうございます」
「誰からもらったの?」
「自分で買ったんですよ」
「ホントに~?」
センセイと上原さんの会話。
準備室の隅で雑巾がけをしながら、
パレットの絵具をふき取りながら、
耳にするふたりの声が、時々、どこかにチクリと痛い。

