「殺さなくて、いいん……ですか?」
思わず聞き返してしまう。
長州間者じゃないのか、と昨日あれだけ疑われていた分、喜ばしい結果を自分でもすぐに信じることができなかった。そんな私に近藤さんは明るい声で言う。
「あぁ。昨夜のこともある。君の命を狙う黒幕はまだ明らかになっていないからな。我々が保護し、監視下に置くことが今は妥当だろう」
「……っでも、私には怪しい点が多いって、」
「っは、自分で何言ってやがんだ」
土方さんが鼻で笑う。
「記憶、ねぇんだろ?」
「え?」
「お前、記憶を失ってんだろ」
目を見張った。
そう言ってくれたのが土方さんであったからこそ、信じられなかったんだよ。
「だったら、仕方ねぇだろうが」
土方さんはばつが悪そうに私から視線を外し、小さく舌打ちする。
「記憶失ってるやつに、あれこれ言ってもどうにもならねぇ」
「……私を、信じて……くれるん、ですか?」
「あ゛?なんだ?ちげぇってのか!!」
震える声で訊いた途端、土方さんは苛立ったように荒々しい口調で私を睨む。自分が折れてやってるんだから、素直に受け止めろ、と。言葉の裏に込められた真の意味を理解して、体から一気に力が抜けた。
この時代へ来てから、安心感を全身で味わったのは初めてかも。生きられる、まだ生きられるんだ。堪らなくうれしくて、涙が出そうになった。
