今更ながらしまった、と焦りを覚える。居た堪れなくなって顔を俯かせると、信じられない言葉が降ってきた。
「でも、なんていうか……ほんとにちょっとだけど、納得は……してしまった、かも」
「―――え?」
顔を上げる。目が合った鞠千代はまだ疑念を露にしてはいるものの、たどたどしく唇を動かす。
「あたし、あの夜……あの邸で皆が長人たちと戦い始めたとき、あの部屋の天井裏に忍び込んだんだ。そしたら………急に、あんたが現れた」
当時の光景を思い出したのか、僅かな恐怖を含ませた声でもう一度繰り返す。
「本当に、ちょっと瞬きした間にっ……一瞬で、あんたは現れた」
この子、あの夜……私の倒れてた部屋にいたんだ!!
「信じられなかった。神経張り巡らせてたけど、気配なんて感じなかったもん。どっから入ってきたんだ?!って……。乱闘してる家ん中に好き好んで入るやつなんていないだろうし……」
声はだんだん小さくなってゆく。
「だからっ……信じられないけど、納得はできないこともないってゆうか……ねぇ?」
鞠千代は同意を求めるように泳がせていた視線を東雲さんへ向けた。彼女にしては珍しく戸惑ったように一度は視線を逸らしたけれど、小さく頷く。
「確かに……。それならあの異人のような格好も、着物の着方がわからんなどと馬鹿げたことを言い出したのも…………納得できないことはない、かもな」
「ほ、ほんとですかっ?!」
床に両手をつき、思わず身を乗り出す。
二人が私を少なからず肯定するような、こんなことを言ってもらえるなんて、私自身夢にも思っていなかったから。そうであってくれればどんなにいいか、と淡い願いを抱きつつ、どこかで諦めてしまっていた。それが、大きく引っくり返されようとしている。
全部を全部信じてほしいとは言わない。でも、でもッ―――!!
今の私を少しでもいいから理解してくれるような、自分でも狡猾だとは思うけど……そんな存在が欲しかったの。
