それは信じられないくらいに衝撃の強いものだった。両親にさえ心配された記憶がないから、反応の仕方がわからない。頭の中が整理できなくなる。
「……君、さっき言ったよね。〝私もこんな思いせずに済んだ〟って…」
━━『あなたがあの夜、私を殺してれば……私だってこんな思いせずに済んだ…!!!!』
「僕も同じだ。君さえいなければ、君をあの夜殺していれば……僕は、こんな複雑な心境にならずに済んだ」
口調は抑揚なく淡々としているのに、喉の奥から今にも泣き出しそうな哀しい響きが声に滲む。
殺される、という恐怖と緊張は嘘のように消え失せていた。代わりに、何故だか悲しみが身体中を侵食し始める。この状況で一体何に対して悲しみを抱いているのか、自分でもよくわからない、異常な気さえする。それでも、ただ、悲しくて仕方ないんだ。
永遠にも思える一秒が降り積もっていく。
私はじっと彼を見つめ続けた。目が逸らせなかった。逸らせるわけがない。
私、という彼自身にとって敵でしかない相手を目の前に刀を振るえない、息の根を絶つことがどうしても躊躇われる、殺したいのに、殺せない。そんな己に対する怒りと焦燥が入り混じった表情で、私を見下ろしてくる彼から―――
「―――そのへんにしてやってくれないか、総司」
二人には打ち破ることができなかった沈黙を破る。
すーっと静かに戸が開かれた。
「しのちゃん……」
……東雲、さん?
このタイミングでの訪問に彼は然程驚いた様子を見せなかった。恐らく気配か何かで彼女がいたことに気づいていたんだろう。彼女もこの室内の現状に慌てたりはせず、窘めるように言った。
「刀を、納めろ」
その瞳はもう殺気を宿していない。でも、まるで意地を張る子供のように、彼は私の喉元から刀を引こうとはしない。
