新撰組屯所。



「ご苦労だったね。皆が無事で何よりだよ」



屯所では、私たちの姿を見るなり安堵したように表情を和らげた山南さんが出迎えてくれた。


その後すぐ、私は逃げ出した経緯や平田の存在を、山南さんに訊かれるがままに全て正直に告白し終えると、東雲さんや長束くんと別れ、再び幽閉されていたあの部屋へと連れていかれた。




ここへ、戻ってきてしまった。



平田やあの男たちが言っていたように、逃げ出したんだから私の処刑は確定なのかもしれない。頭の片隅でぼんやりそんなことを思いながらも、私は不思議と取り乱したりはせず、とても冷静な思考を保っていた。


相変わらずの狭い部屋。皮肉にも少し懐かしいと感じてしまう。ただ一つ逃げ出す前とちがっていたのは、火の灯った燭台が置かれていること。




「多分、山南さんあたりが手配してくれたんじゃないかな」


戸のところに立っていた沖田さんが目で燭台を示す。


「あの人は誰にでも優しいから。あの土方さんが気を利かせたとかだったら、とてつもなく気味悪いしね」


誰にでも、の部分で出迎えてくれた際の敵である私にまで向けられたその表情を思い出す。心の中の何かがぐらついた。


ゆらゆら、ゆらゆら。揺れる炎を見つめていたら、口許に自虐的な笑いが込み上げてきた。私、敵だよ?脱走者だよ?こんな気遣い、いらないのにね。




「っ?!」


不意に、彼に手を取られる。驚いた。彼がまだ、室内に残っていたことに。