斬られる!!
私の見開かれた瞳の中に銀の刃の影が宿る。
―――キン!!
一瞬にして何かが凍り付いたような鋭い金属音が響く。刀が私の頭に触れようとした寸前のところで、彼がそれを受け止めていた。
「っ…ハァ!!」
彼は立ち上がると共に、それを力強く打ち払う。男は一旦、大きく後ろへ飛び退いた。
「いい?絶対にそこから動くな」
再び刃を構え、彼は肩越しに目を見開いたまま石の如く固まる私に振り返った。
「少しでも動けば……殺す」
彼は口許だけで薄く笑いながら告げると、地を蹴り、刀を構え直した男へ流れるような動作で一撃をくり出した。
キン、キン、と刃が交差する音が暗い竹薮を支配する。沖田さんと東雲さんが舞うように動き、振り下ろされる刃を受け止めては弾き、あるいは、相手が刀を振るうより先に自らの腕を動かしては、次々と男たちに一撃を浴びせていく。演じているのか、と思ってしまうほど華麗な殺陣。
す、すごい。これが、新撰組……。
私は鼻を押さえながら、息を呑んだ。目の前で繰り広げられる生々しいけれど、思わず魅入ってしまうような見事な光景に目が釘付けとなる。だから、気付かなかった。気付けなかった。
多量の出血に意識を朦朧とさせ、おぼつかない足取りながらも、辛うじて刀を握り、憎悪の眼で自分へと背後から迫り来る男の影に……。
