「鈍い―――!」
鋭く言い放つと同時に男の首の位置で鞘から刀を抜き取り、その軌道のままに頸部を斬った。
真一文字に描かれる、赤。背中から倒れこむ男。これが、僅か数秒の間に私の目に映った光景。人が斬られる、光景。
それを見るのは決して初めてじゃない。思えば、この時代に来て一番最初に目にしたのが斬られた男が崩れ落ちる様だったから。けど、あのときは別の恐怖に支配され、叫ぶ間を与えられなかっただけのこと。今はあの時とは状況がちがう。
だから、私は悲鳴を上げる。本能のままに。
「っゃ……きゃあああああああああああ!!!!!」
「うるせえ黙れ!!」
――バコッ!
すぐ近くの男に顔を思いきり殴られた。私はその痛みに声にならない声を上げながらその場に倒れ込んだ―――刹那、表情から先刻までの笑みを消し、瞳に殺気を孕ませた沖田さんが庇うように私の前に現れ、男に間合いを取る間すら与えず、居合いを思わせる素早さで鯉口を切った。
「うわああああああああ!!!」
宙を舞う紅い飛沫。倒れ伏す男。それらがスローモーションで映った。
「ん―――!!」
口許と鼻の辺りを覆った両手に生温い感覚が伝う。見ると、その指の隙間から手の甲に血が伝っていた。
「吐血か?!」
目を見張った彼がさっと片膝を付く。私は左右に首を振りつつ両手を顔から離した。
「ちが、……鼻血、止まんなっ…」
「なんだ、てっきり吐いたのかと…」
ほっ、と安堵のため息を零したのも束の間、
「死ねぇェェ!!」
座り込む私の頭上で、半狂乱した別の男が刀を振り下ろした。
